11月の一言②~メラミン問題で感じたこと~

・11/10メラミン問題で丸大食品社長が初めて会見の場に臨み、その中で「健康被害がないと想定できたから、会見に出なくてもどうってことはない。」
「メーカー責任は十分認識しているが、自分たちも被害者の一面がある。」
「専門知識のある担当役員が会見に適任と判断した。」等との報道がありました。

・マスコミ報道については事件性、話題性がないところや前後が省かれ、大衆受けする都合のよい言動のみを取扱うきらいがあり、鵜呑みにはできません。
また、トップの謝罪そして引責辞任に追込むのが自分たちの役割と、目的と手段が混在した面も見受けられることは否定できません。


・しかし、話半分としても事の重大さに対する認識の甘さや、周りがどう言おうと責任者としての事態収拾を前面に出て指揮する必然性判断の誤謬いわんや、自分たちの落ち度ではないと取られかねない自己中心的な回避言動は、トップの人格、識見に疑念を抱かざるを得ません。
これらは、偽装事件等も併せて不祥事に対する危機管理に多くの教訓を含んでいます。
世の中は「人のウワサも75日」では済まなくなっています。

・このような場合によく言われるのが、内部統制の構築、整備の必要性です。
上場企業は内部統制体制を自ら評価し、内部統制報告書を作成、提出更に、監査法人監査を受けることが義務付けられました。
しかし、これは業務の適正さ、財務報告の信頼性を確保することに実務の重点が置かれているような気がします。


・確かに、不祥事を防ぐための基盤であることは間違いありませんが、有事の対応、事件性のある問題の対策となる「危機管理」は別途その仕組み、行動手順を作成、周知する必要があります。
災害は忘れた頃に来るのですから、肝心なのは年に1度位の想定訓練を実施して頭の隅に留めておくことです。
不祥事発生会社は共通して、この点が欠けているような気がします。対岸の火事ではないのです。

・とは言っても、所詮人間がやることなのです。
形作りから始めますが、魂を入れるのは大変困難なことなのです。
従って、実際に発生した場合、全員が初めての経験であり、右往左往して完全な対策が実施できないのが普通です。
そこをまたマスコミが突いてくるわけです。
(但し、中小企業の場合は不作為であっても発生そのものが致命傷になります。また、業界慣行であっても偽装は問題外です。)


・そこで、「通常、これ位はやっておくべき」の危機管理については、多くの刊行物がありますので、今回は最低限の「起こった時の対応」をみてみます。
そんなに難しく考えることはありません。順序よく当り前のことを当り前にやればよいのです。一貫してあるのは「誠実」です。

・起こってしまったことへの対応の目標は、被害、影響を最小限に抑えることです。
何かの隠ぺいや、取り繕った言動はいずれボロがでるものです。


①対策本部の立ち上げ

・即刻対策本部をマニュアル通りに立ち上げ、稼働させることです。
社長を本部長として役割分担等を決めてリスクマネジメントを行います。
これは並行、混在する対応活動に対し指示命令、情報の一元化を図り、最適な対策と実行管理を指揮するためであり、社外からの窓口にもなります。
いずれにしても、初期対応がものをいうのです。

・マスコミ対応が必要な場合は、第3者的立場で冷静に判断できる社外スタッフ(コンサル)の支援が欠かせません。
また、関係官公庁、取引先などに時機を得た開示が求められます。


②事実を収集、認知する。

・実際の活動はあらゆる関連する事実、資料の収集がスタートです。
その事故はいつ、どこで、何がどのように起きたのか、生産物であればその記録、在庫、製造現場状況、拡がり等々です。

・検証も必要です。この事実からもっと他にないかを遡及して、間違い、漏れを防ぎます(食品のトレーサビリティに相当)。
そこから、次の活動ステップやブレの無い説明ができます。


③原因究明と課題追求

・「~と思う」「~と考えられる」推測を入れない事実を紡ぎ、原因を究明していきます。
できれば外部有識者、専門家を委員長とする「社内委員会」を設置して、その報告書作成を依頼します。
社内部だけの原因追究は何か隠しているのではとの信頼度が著しく低下しており、第3者の支援が安心をうみます。

・当局が現場、書類を押えている場合は、これがどうしても後手々々になります。
会社としては確実な裏付けなしに公表することは差し障りがある面が出てきます。
しかし、マスコミは常に動向の答えを求めてきます。
これには、情報の開示と説明責任を念頭に誠心誠意対応するしかありません。


④改善策を示し、実行する。

・報告書の問題点に対し改善策を策定して、二度と発生しないような取組みをすることです。
それは該当部署のみならず、トップが先頭に立って全社の業務全体のどこにリスクがあるかの評価と具体的な管理推進を実施しなければなりません。

・ちょっとした異常でも上に報告する習慣をつけて、リスクをその部署のみで処置することは慎まなくてはなりません。
リスクがクライシスになってからでは遅いのです。


・以上は、概ね大企業の対策ですが、その考え方、方法は違いこそあれ当社でも参考になると思います。
お客様情報が流失し悪用され、それが業界に知れ渡ると、全く信用をなくしてしまいます。
リスクがあるなと思うところは、日頃のチェックを。

以 上