・ 事務上のミスが大問題を起こす時代になりました。とりわけ、システム化
された仕事で例えば、1つの投入ミスがそれを誘います。
・ 作業がデータベース化されていて関連処理が同時に行われている場合、
異常値を検知するようになっていればよいのですが、大きく間違った数
値となって提供されて、ミスと云えないほどに深刻な事態になる可能性
があります。
・ 生産系の会社は現場事故防止に長年の努力が身に滲みての対策があり、
事務面においてもそのリスク防止に積極的な対処があるものです。
・ ところが、営業系、事務系会社は逆に、仕事のミスを防ぐ手順、体制作り
が弱いと云われています。仕事に属人的な個性が入り込む傾向にあり、そ
れがミスのもとになりかねないからです。
・ ミスのメカニズム、ミス解決への対処法等を記述した本がありました。うっか
りミスでは済まされない状況になってきたことを物語っており、細かに説明
しています。
・ ミスに対しては何らかの防止改善、修正がされて仕事が流れていくので、あ
まり難しいところまで入り込んで考えることはないかもしれませんが、大事
なことは一番怖いと云われている「慣れ」への注意を促していく必要がある
のでしょう。
・ また、ミスの原因を個人の技能の方に目を移しがちです。しかし、それが職
場の体制そのものにあって、そこを見直し、改革にまで着手しなければなら
ない大ごとになる場合も忘れてはならないと思います。
・ そこで、この本にある事務処理に有りがちな実践から導き出されたミスの基
本的なところの一部を2つ簡単に整理してみました。
(1)見直しのポイント
・ ミスが発生する前にそのリスクを抽出し、予防措置を取るのがよりよい方法
と云えます。
しかし、そんな大層なことではなく、小さなミスは仕事の中でよく発生して
経験的に何とか見直してしまうのが通常です。
・ そうはいっても、ちょこっと修正して終わりでは、ミスに対する認識が深まり
ません。やはり、どうも複雑すぎないかとか、効率が悪すぎるとか、あちこち
修正しているなどの仕事は、ミスの巣のようなものです。
・ そうなると、何か手を打つ、効き目のある対策を少し考えて取り組んでもよい
のではと思います。ただ、全てのミスをなくすのは、難しいでしょうが。
・ そこで、どのやり方がよいのかの当り前のヒントとなる見直しポイントをとり
あえず3つ挙げておきます。
▼作業手順の改良
・間違いが全くなくなることにはならないが、対処療法になっていないか、指示
だけで本当に対処できるているのかなどをしっかりと観察することです。
そこで、作業手順に入るかどうかの判断をするのです。
▼使いにくい道具(ソフトや装置)をどうするか
・お金が掛かる場合が多いので、費用対効果を検討した上で入れ替え等を
考えます。費用大なら、次善策はどうすべきかまでの措置が求められます。
▼失敗の被害を最小限にしていく
・場合によって、やり直しや取り消しがすぐできるような工夫を考えます。
例えば、全部を一挙に処理するのではなく、1つを先行してやり、上手くい
けば継続する方法です。
・間違いが多い業務は、全く異なる方法に切り替えられないかも考えてみる
ことです。
・ 他にも、「問題を逆手にとる」「しなくても済むようにする」などのパターン
が紹介されていました。
・ いずれにしても、「お前がミスしたのが悪い」と責めることが多く、いわゆる
人に焦点が当たるような気がします。それでは対策になりません。
何がおかしいのかを観察して、実際に効果的な具体策を検討する努力も欠か
せないということです。
(2)気付き
・ 大きな事故につながるようなことを見つけるのは、難しいでしょう。しかし、
1件の重大な事故には、300のヒアリハットがあるとされています。
(ハインリッヒの法則)
・ 従って、小さなミスだからといって、対処療法的に注意、指摘を繰り返してい
るだけではダメなんです。さっぱり上手くいかないななどが続くようだと、
少し原因を掘り下げることも必要です。
“見直し、改善がなければ、仕事と云えない”と云う識者もいる位です。
・ その第一歩が、やはりアンテナをしっかり張っての「気付き」がなければなり
ません。それこそが、予防の方向性や具体策になっていくのです。
・ システム化の進展は事務作業の投入が即結果が出るようになり、そのプロセ
スがブラックボックスになっています。何か変だなといったことの感知が難し
くなっています。
・ 昔、プロセス段階も含めて人海戦術時代は多くのチェックが入り、未然に同じ
ミスを防いでいました。現場をしっかり見ることにも通じます。
・ 次のポイントも頭に入れて、気付きの感度を高めましょう。
▼情報の複線化に注意
・データが複数あるとき、双方へのチェックをしても混同ミスが発生します。こ
の場合はこうだと云うきまりを目で分かるようにして、確認を徹底するの
です。
・「しきたりの文化」(ex.祝儀袋の区分)は確実な管理が発達してきた一面
をもっています。
▼作業の流れにチェックが入っている
・“注意”“注意”と声高に云っても、形式化してしまいます。作業のプロセスの
中に「これこれをしないと」次に進めない探知工程を入れる可能性も工夫し
ましょう。
▼トレーサビりティ機能
・どうしてもミスが時折でる仕事の原因を探る時、手順等が逆探知できると素
早く無駄のない対処となります。
製造品では当り前になりつつあるトレーサビリティは、事務処理でも取り入れ
ると有効な場合があると思います。
▼“揃い待ち合流”を避ける
・時間、効率を高めるため作業を手分けすることは、よくあります。ところが、
合流地点で処理の遅早によって待ちが生じます。一方に指示が行き渡らない
とずっと待ちになるミスになります。
・案外、これに近いミスはよく起こります。チェックをどこでかけるか、ある
いは手分けしても一本道のフローのように仕組むことも考えてみるのです。
(茶道、華道はそうです)
・ 他にもいろんなミス防止のやり方が記されているのですが、全体を通じて感じた
ことは品質保持、効率化にまい進している製造部門のやり方を知ることが、ど
こかで事務部門の作業手順等のミス防止の助けになるような気がします。