・ 「タニタの社員食堂」シリーズ本が、近年の健康志向を受けてロングセラー
(400万部以上)となっており、 とうとう丸の内に「タニタ食堂」が出店するま
でになりました。
・ 社員食堂が再評価されていることは、これからも確かなようです。
それを取り上げているコラムがあり、乗りでB級グルメ選手権があるように、
「社員食堂選手権」があってよいのではと云っています。
おもしろそうなので、私の経験も踏まえてまとめてみました。
・ そもそも、社員食堂は従業員への「福利厚生」の一環としての位置付けに
あります。多くの従業員のいる事業所では、安価でまずまずのボリューム
のある食事提供の便宜を図ることに満足度が高かったと云えます。
我々も、当り前のように利用していました。
・ このコラムではいかにも、食事代そのものまで会社が援助するようにみえ
るところもありますが、従前よりそこまでする会社は数少ないと思われます。
(従業員全体が利用できるようになっていないと、公平性から一部の人へ
の食事代補助は難しいのです。)
(1)事業所
・ 事業所が各地にある会社は、地方の支店、営業所にまで食事の支援をし
ていくことにはなりません。せいぜい、本社のあるビル内において設備、
光熱費、水道代、什器類等を無償提供して外部給食請負業者に委託
します。
・ だから、それ程特徴があるわけでなく、世間に公開することなどなかった
わけです。利用者も飽きてくるとたまに外食する位が一般的といってよい
でしょう。
・ ランチ、弁当を提供する飲食店が多くなり、何と云ってもコンビニは代金、
利便性、献立が食堂に劣ることなく発展してきました。
献立等に変化が少ない食堂から、周辺の会社員を吸収してきました。
・ 食堂の対応に一定の限界がある中で、利用者減少は廃止の格好の事
由となり、存続してもギリギリのところで踏み止まっている形になってし
まいました。(立派な会社もまだまだありますが)
・ IT、ベンチャー企業が近年社員食堂の豪華さを競っているところがあり、
食事補助が伴ってのカフェレストラン風食堂をメディアで取上げること
が増えたように思います。
・ そういったことが会社の1つの魅力となる宣伝効果や、従業員への福利
厚生面を強調する、就職応募の好感度を上げるなどになっているよう
です。
・ それが、社内の結束を高め、よい社風をつくり、誇りになっていくという
企業文化につながることでのメリットは大きいと思います。今はまだそ
こまでやっている会社は、大変少ないはずです。
(2)工 場
・ 工場の場合は作業服のままで外食、買物がままならず、操業時間の制
約もあって食堂はなくてはならない設備であり、利用価値は今でも衰え
ていません。
・ ただ、外部委託はコスト削減の例外とならず、運営費の効率化を食材を
含めて求められる時代になりました。
・ 工場は食堂委員会なるものを設けて、従業員からの要望や業者との値
上げ交渉の窓口の役割を果たしているところも多いと聞きます。
・ 従業員は特に、値上げにうるさいのです。先立つ援助がなければ、それ
に合わせての食材、献立とならざるを得ません。米飯量を少なくして値
上げを押さえる工場もあると聞きます。
おいしさ、バラエティは後ろにいってしまいます。
・ 食堂は現場の仲間が気楽に集まってきている場所でもあります。飲食
を共にしながらのオシャベリは男女を問わず結構しています。意識しな
くても、それなりの挨拶があり、コミュニケの場として適当です。
・ 普通食堂のまわりには、休憩ルームや娯楽室を備えています。気心の
知れた人達のいろんな話や趣味の場、意見交換などプラス面が多々有
るのです。
・ しかし、再評価の中心は本社ビルのようなところの食堂であり、工場の
方までには至っていないのかもしれません。
食堂必須の工場の方が、効果を考えて見直しに着手することがよいよ
うに思いますが。
(3)見直しのポイント
・ コラムでは、見直しのポイントを次のようにまとめていました。
1. まだまだ日本企業は家族企業としての文化が残っており、社員が楽しく
会社で仕事をしてもらう要件としての食堂は「健康」にも良いとの発想
が加わった。
2. 社員に愛情を持っての施策を打つ企業の方が、組織的にも強くなると
の仮説までメディアが云い出していく始末である。
社会が個々人に優しくなって来なくてはならないが、会社が何とか個々
人に優しくしていく姿勢も大事であるとの思いが出てきている。
3. 人々の価値観の多様化は、食文化でもあらゆる国の食物、レストランが
あるように成熟化が一層進んでいる。
それに関連する社員食堂はその対象外ではなく、見直されていく方向に
ある。
4. そして、行きつくところまでとは云えないが、B級グルメ選手権や駅弁フェ
アがあるように社員食堂のそれも登場してよいように思う。
料理人として食堂等で腕を磨き、いいものを創っていくことに情熱を注げ
たら、これほどよいモチベーションはないはずである。立派な料理人の
いるところに人も集まると云える。