グローバル化にあっての足元

 昨年2月に、世界のリーダー達が集まる「ダボス会議」を取り上げました。
  民間企業トップクラスの参加が寂しく、顔を突き合わせての対話の必要性、
  活用を竹中平蔵教授が主張していました。
 その会議の中で、各界から毎年ヤンググローバルリーダー(40歳以下)
  の選出があります。そこに、日本の実業界からライフネット生命保険
  岩瀬大輔(代)副社長が2010年に選ばれました。
 これを知って、ネットによる経費を最小限にしての安くて、便利な保険商品
  を販売しているというこの会社に興味を抱いてきました。
 この会社の出口社長の講演がありました。海外勤務も長く、多くの著書や
  講演をこなしている方です。まさに、グローバルに身をもって体験されてい
  ます。
 テーマは「競争力」の視点から、グローバル化の中で何を基本に理解して
  いけばよいのかの説得力のある内容でしたので、紹介したいと思いました。
(1)正しく理解する
  “日本は役人が威張っている大きな政府の国”と思っている人が、多いの
   です。しかし、人口10万人当りやGDP比率人件費では、G8で一番低
   いのです。
  このように、メディアの論調が本当かどうかは、正確な姿をみるための
   「事実」「数字」を基にしたロジックの考えでもって全体を見ることです。
  すなわち、タテ(従来の慣習や考え方)とヨコ(同時代を生きる世界の人々
   の考え方など)を見据えることが、都合のよいように解釈しがちなことへの
   対応なのです。
(2)異常な少子高齢化と財政赤字
 ◆ 少子高齢化
  人口統計予測は数少ない正確な資料であると云われています。ゆえに、20
   年前からこの問題は指摘されていたのです。
  東京圏で女性が働きながら子供を育てる大変さは、選挙の一票につながら
   なかったのでしょう。(少子化対策予算はGDP比で先進国最低のレベルに
   あります)
  ・フランスは人口増加国になっています。消費税は高くても子供に対する給付
   支援は目を見張るものがあります。
  財政赤字
  次々日本のトップが入れ替わると、借金がしやすいのでしょうか。自分の代
   で返済を追求されることがない国なのです。
  国債は、子孫の代に分けるべき税金を先に使うことである”が先進国の議
   論の基にあるのです。議論が、景気刺激策だけの問題として捉えないの
   です。
(3)若い国の政策に固執
  就業者年齢が高くなっている現状では、身体を張って働くというより、お金に
   働いてもらう高通貨(円高)、高金利(金利引き上げ)」の政策があって
   よいと云っています。
 ・ しかし、日本の経済、金融政策は全く逆の政策に固執しています。
   それは、金利上昇が国の破たん可能性をみているからであり、輸出製造業
   に頼るには円高が困るのです。
 ・ グローバル化にあって製造業の「空洞化」は、人件費と市場からみてごく自
   然なことなのです。
(4)構造改革を怠った
  80年代に一人当たりGDPで、アメリカに追いつきました。この時、先進国か
   ら“今までのような中央集権と統制経済はダメ。自由経済中心の運営。”を
   迫られました。
   外為法や金融制度の改革などによるカジ切りをしました。
  ところが、冷戦終結、インドの市場参入等対象となる国、人口がいよいよグロ
   ーバル経済を念頭に置かざるを得ない状況になりました。
  しかし、バブル崩壊で体力が衰えていたため、肝心の構造改革を怠ることに
   なりました。それが、経済を停滞したままにしたと云っています。
   そして、海外進出は経営のグローバル化に直面する事実になるのです。
(5)自分の頭で考える
  一所懸命働けば所得が増えていく社会が続いたため自ら考えなくなり、メデ
   アの報道、記述を通じて物事を信じる割合が高い国民となりました。
  経済人が“政府の成長戦略が見えない”“政府の為替介入が足りない”など
   は、とても道筋を示す専門家の台詞とは思えないと云っています。
   困った時こそ、自分で考え、判断して行動する習慣がなくてはならないの
   です。
  政府は税金の配分を行う場所。付加価値を生み出すには、民間が自覚を持
   ってイニシアティブを発揮するのが原則なのです。
  ライフネット生命の採用に当っては、字数無制限の難しい論文を提出させ
   ているとのことです。(30歳までは定期採用枠)
(6)リーダーの多様性
  リーマンショック後、「日本型経営」を見直す機運が高まっていますが、何故
   株価は上がらないのでしょう。それは競争力(コンテンツの魅力)を失ってい
   るからです。また、経営層も相対的にコミュニケ能力が低いと云えます。
  同質的な日本企業は居心地がよいかもしれないが、「若者、女性、外国人
   の能力を引き上げてリーダーにしないと、これから益々増える海外進出、グ
   ローバル化に対応できないことは明らかです。
  経済を牽引する消費の中心は、女性です。EUは女性役員割当制を徐々に
   実行に移しています。
   また、欧米は40歳台がリーダーの中軸にあります。若さは重要なのです。
  そして、若者、女性、外国人を活用することで、人的資源が豊富と云えるの
   ではないでしょうか。
*「グローバルに考え、ローカルに実行する。」がよくいわれるが、「ローカルに
  考え、グローバルに実行する。」も的を射ているところがあるような気がします。
*仏のシラク前大統領が述べた「少子化対策3原則」を紹介しておきます。
  1. 子供を持つことによる新たな経済負担を生じさせない。
  2. 無料の保育所を完備する。
  3. 3年後に女性が職場復帰する時、その間勤務していたものとして企業は
    受け入れなければならない。