・ 2011年洪水で停滞したタイを抜き、インドネシアがASEAN最大の自
動車市場となったとの記事がありました。
・ これまでメーカー等による投資、日系部品サプライヤーの進出ラッシュ
が続いており、販売市場として、生産拠点としてのインドネシアへの関
心、注目は衰えることがないとも云っています。
・ その割には、自分を始め一般の注目、関心度はあまりありませんでした。
ところが、その実態と今後についてコンサルタントの視点から見たコラ
ムがありました。
・ 自動車産業のそれでしたが、なかなか目がいかないところであり、分か
りやすかったので少しまとめてみました。
1.現状と魅力
(1)投資ラッシュ
・ トヨタが2014年新工場設立発表。日産、スズキ、ホンダ、三菱の日本
メーカーも能力増強を今年発表しています。
日本車シェア9割なのです。生産シェアもダイハツがトップです。
・ 生産能力 現行 (計画)
ダイハツ 33万台 (43万台)
トヨタ 10 〃 (23〃 )
日産 10 〃 (25〃 )
スズキ 8 〃 (15〃 )
ホンダ 6 〃 (18〃 )
2015年には2倍となる150万台規模
(2)好調な経済と人口
・ モータリゼーション到来基準……1人当り実質GDP3,000ドル突破
と云われるが、2010年達成。
・ 2011年販売台数前年比17%増(89万台)……将来伸長余地は大
きく、産業拡大の牽引役となるでしょう。
・ 乗用車普及率(2010年)……まだまだタイの優位性はあると考えられ
ますが、
マレーシア 30%超 (GDP15,000ドル超)
タイ 15 〃 ( 9,000 〃 )
フィリピン 5%未満( 3,000 〃 )
インドネシア 5%位 ( 3,000〃 )
・ 人口2億4千万人(世界第4位)……労働人口比率2030年がピーク
に達する(まだ若年層比率高い)。産業基盤となる人口資源の豊富さ
が内需増となり、経済を支えていきます。
(3)日系ブランド
・ 国民車と云われているのは、トヨタ「キジャン・イノーバ」。手頃な価格
帯にも日本車が目白押し。
・ 他国メーカーも狙いを定めているが、数十年に渡る現地生産で築い
たブランドと、無数の島からなる国の要所を押さえているデイラー網
は一朝一夕には追い付きません。
・ これまでの努力が花咲くのは、これからと云ってもよいでしょう。
しかし、生産・輸出拠点からはどうなのでしょう。
・プラス面……平均賃金はタイの1/3程度(工場労働者としても比
較的勤勉と云われています)。タイは失業率低く(1%前後)、今後
の人材確保、賃金上昇は懸念材料。
・マイナス面……天然ガス世界有数の産出国という強みがあり、人
的資源と相俟って産業としての国際競争力になかなか結び付かな
いのではないかと云われています。
(4)産業育成政策
◆LCGC(ローコスト・グリーンカー)政策の検討
・ 低燃費の小型車に一定条件を満たすことによる税制面の優遇(部
品等関税でも減免措置)を検討中であり、普及への起爆剤としての
期待が大きい。
◆2025年までの長期開発計画
・ マスタープランが発表されました。2011〜14年毎年6.4〜7.5%、
2015〜25年毎年8〜9%のGDPを達成して、2025年1人当り国
民所得15,000ドルを目指すという大変野心的な目標です。
・ そこには、ジャカルタ近郊のインフラ整備を一気に進めるプロジェク
トもあります。当然、道路整備、港湾開発等が入っており、自動車産
業にとって追い風です。
2.リスクと課題
・ 2012年のインドネシア自動車市場は順調に立ち上がっており、1〜3
月販売台数25万台(前年比11%増)を記録しています。
・ 日本メーカーもこれに合わせて新車発表、現地生産を進めています。
ただ、海外進出は発展性のメリットばかりでなく、リスクが必ずあります。
よく引き合いに出される中国をみても分かります。
・ インドネシアの課題何かというと、次の点に十分留意すべきであると云
っています。
(1)ローン規制
・ 2012/6月から予定のローン規制があります。頭金比率を高めて
不良債権拡大を防ぐ施策です。
・ そして、問題視されているのは、補助金付ガソリンの値上げです。
実行されていないものの、財政悪化の観点からいずれ俎上に乗って
くるといわれています。
(2)賃金改定
・ 最低賃金改定でデモが発生しています。経済の発展が賃金上昇に
いくことは、当然の流れです。
・ 各州がその決定権を持っているため、選挙の道具に使われる危険
性があり、予断を許さない状況と云えます。(ただ、主要都市給与比
較でジャカルタは上海の5割強です)
(3)インフラ整備
・ 大渋滞が慢性的にあり、自動車増に対し道路整備等が追いつかな
い実状にあります。インドネシアからの輸出を考えると、港湾開発も
待ったなしの課題と云えます。これも、年々増大している貨物量にま
もなく対応仕切れなくなると云われています。
・ 政府はいろんな政策で対処しており、期待もされているが、どこまで
早期に実現できるかの問題を含んでいます。
(4)政情
・ 次期大統領選は3選を禁じていることから、新大統領が誕生します。
これも、十分頭に入れておかねばならないでしょう。
・ 以上、このようなリスクがあっても、進出に魅力的な市場であることは
間違いないところであると云っています。
・ 商社をはじめとする原材料、資源の開発輸入中心のイメージが強くあ
りましたが、日本企業との関係は昔から深く、上手な付き合い方が
今後も可能であろうと素人的に思っています。
・ つい先日、インドネシアで急速に伸びているソーシャルゲームの記事
がありました。娯楽産業の成長は経済成長の証しである、ウラづけの
ようなものと云われています。
これからも、我々が注視しなければならない国の1つなのです。