・ セラピー用赤ちゃんアザラシ型ロボット「パロ」というのがあります。
作成経緯を含めて欧米や大震災被災地での心のケアで活躍しているこ
とについて、開発者本人の記事がありました。
・ 過日、TVでこの「パロ」が紹介されていたのを思い出しました。あの白
い目がパッチリした可愛い姿のアザラシは、誰もが思い浮かべます。
・ 大きさは、よくある市販のペット代替用の犬猫より少し大きく、ペットとして
のインパクトはそれほど感じなかったこともあって、“面白いものを作って
いるな”で終わっていました。
・ しかし、一般家庭におけるペット代替もさることながら、目的の方向はアニ
マル・セラピー代替としてのロボット、すなわち人と共存し、ペット動物
のように触れ合うことで楽しみや安らぎを提供する新たなセラピー役割
を持つロボットなのです。
・ 現在、産業技術総合研究所の中で研究開発や調査、効果の評価など
を一層進めています。
更に、社会システムへの組み込み展開が、大いに期待されているとこ
ろであります。そこで、記事を少しまとめてみました。
(1)「パロ」の研究開発
・ ペット用動物ロボットは、結構大きな市場になっています。あまり精密な
ものではありませんが、一般家庭の生活のなかで、人との触れ合いに
よる「持続的相互作用」があると云われています。
・ この効果に視点を当て、欧米ではさまざまな施設でのアニマル・セラ
ピーが研究されて、その有用性が明らかにされてきました。
・ 心理実験などから赤ちゃんアザラシ型は、犬のような複雑な動き、行
動範囲を必要とすることがなく、目がパッチリ、毛がフサフサして温かみ
(温度調節)があります。
・ また、比較の対象となるものがなく、アザラシなのでどうやら当初の期
待度が大きくないため、上手くいったときにセラピーとしてピッタリと思っ
てもらったのでしょう。
・ 今では、国際的な安全認証を取得しており、故障もほとんど発生して
いません。
技術的機能は次々と導入され、いろんな反応ができるようになりました。
・ 例えば、触覚センサーが撫でられたり、触れられた方向を認識します。
音声認識、鳴き声、体温反応などセラピー用としての適したポイントが
良好になり、センサーからの情報をデータに蓄えて変化していきます。
・ 同じ刺激でも、パロはその度に違った反応をみせて、よりユーザー好
みに近づいていく研究、作り込みが進んでいます。
(2)社会への浸透
・ 国内は約1,700体販売され、名義は個人約60%、医療福祉施設約
30%です。海外は300体強がセラピー目的に利用されています。
・ 1体約35万円で市販しているが、介護保険適用がまだのため、“少な
いな”の感は拭えません。
・ 一方、ギネスブックに世界一のセラピー用ロボットと認定されています。
日本では開発が評価され、数々の賞を受けています。
・ これは、今後のロボットへの認識、理解を促進するうえで、大きな支援と
なります。
・ 「パロ」のセラピー効果は、次の3つに分類されます。
1. 心理的効果〜気分向上、活力維持など
2. 生理的効果〜ストレス低減、脳機能の活性化、免疫系の活性化など
が各種検査結果からみられます。
3. 社会的効果〜コミュニケの活性化、改善など高齢者施設での生活向
上につながり、介護者の心労低減。
ウツの改善にもつながっています。
・ 認知症のセラピー効果も云われています。パロと触れ合うことにより行
動改善がみられ、特に動物を好む人ほど効果が表れています。
・ 健常者であっても、認知症の予防効果に期待が集まっており、介護予防
を目的の1つにしている高齢者福祉に取り入れるケースが増えています。
・ 欧米、オーストラリアでパロによる高齢者等へのセラピー研究が実施さ
れており、その評価結果を踏まえての本格導入が2009年からデンマー
クで始まっています。
・ 米国でも2009年権威あるFDAがパロを医療機器として認め、認知症等
の臨床データと評価を展開しています。
(3)震災の被災者等への心のケア
・ 避難所での被災による悲しみ、集団生活のストレスなどが問題となって
いました。また、ペットを室内に入れることを禁止していて、外で飼育する
人がいました。
・ そこで、被災1ヵ月後、パロを活用するために避難所訪問を始めました。
心のケア活動をまず20ヵ所で実施しました。
・ 今回は避難所閉鎖やパロの管理の点で、長期的対応ではありませんで
した。しかしながら、多くの人々から喜ばれたので、62体の長期無償貸
し出しや病院、学校への貸し出しを行い、合わせて60ヵ所の医療施設
に活用、貢献しています。
◆特別養護老人ホームは収容定員以上を受け入れているところもあり、
不安からの不眠、帰宅願望の認知症の徘徊などの対策に利用されて、
介護負荷の助けになっています。
◆仮設住宅では、芋煮会等の行事を通じてパロと触れ合い、住人同士の
コミュニケを構築していく手助けになっているようです。