経営計画2〜予算〜

 前回経営計画の大事さと、その基本となるところを記しました。本
  来、経営計画はただ計画を作り、実行管理すればよいということでは
  ないのです。
 現場の環境変化を先取りしていくにも、コミュニケーションの良い風土
  作りがあってこそアイデア等があがってくるのです。
 そして、幹部層が的を射た重要課題を戦略として計画におり込むこと
  のできるマネジメント、スキルを身につけていく必要があります。人材
  育成も重要なテーマといえます。
 日常管理については「月次決算」を追求して、関連する売上回収、仕
  入チェック、在庫管理などによって、経営活動の元となる「お金」を残し
  ていくことに努めなくてはなりません。
 さて、計画やその結果を全員共通項としてみることができるのが、
  数字=金額(場合によっては数量)です。なにをどう繕っても収益額
  が悪化の一途では意味がありません。
 経営計画を年度に落し込んで現場の目標となる数値が、年度、月次
  の「予算」です。そこが達成に向けしっかりと理解されていかねばなら
  ないのです。
 そこで、現場の経営計画の落し込みである予算(年度、月次)につ
  いて少しみてみたいと思います。
  計画は計画、予算は予算と別物ではありません。計画数値=予算数
  値でない場合が多いのですが、計画の趣旨、意図が予算に反映して
  いなければなりません。
(1)予算策定
 1.経営計画の妥当性
   計画の中に経営の努力と成果は抽象的な面を廃し、具体的な数値
    で表さないと計画の妥当性がついてきません。
    だから、決められた会計に乗っ取りB/S、P/Lなどによって表現
    されています。
   そこから導き出される業績指標(事業別粗利益率など)が実態とどう
    なのか、達成の可能性の検討の元となります。希望的な目標値では
    活動の源泉になりません。
   年度活動がスタートすると、いわゆる予実管理と云われる進捗状況
    のチェックがされ、月次の予実差異は翌月以降の活動に反映されま
    す。年度差異は経営計画とどうなのかを見極めて、翌年の予算策定
    時に組み込まれます。
 2.意思決定のツール
   経営の課題は云わずと知れた“儲けてお金を残す”連続です。実際
    の経営ではそこにある仮説を常に検証し、フィードバックを受け、そ
    れをよりどころに次の一手を打っていくことです。
   予算はまさにそこでのツールになるのです。すなわち、結果を見て
    満足するよりも、将来に向けての数字が示されていると解するの
    です。
   現場でもいろんな数字から、今後の目標達成に向けての具体策や
    改善を検討、実行に移していくのです。
(2)どんぶり勘定
  総合予算一本ではどの事業や商品、サービスが儲かっているのか
   損をしているのか、またその傾向はどうなのかなどが解りません。
  売上、生産を担う各部署の利益が不明確では、次の手が打てません。
   動きやカンだけに頼ることになります。
  そんな「どんぶり勘定」に近いことを続けていると、儲かっていると思
   っていた事業が実際には赤字だったりします。あるいは、注力すべき
   事業が解らず、ダラダラと今の経営を続けることになりかねません。
  儲かっている事業はよりシェアアップ(競争の激しい日本企業はこれ
   を大事にする)するなど、儲かっていない事業は黒字を増やしていく
   対策、戦略が必要になるのです。
  ・ 金額と同時に「率」で押さえることも重要です。ある事業が異常に高い
   粗利率目標になっていないかなどのチェックは率で検討するのが適
   当です。
  また、計画と実績の10万円の利益が出ても、それが多かったのか少
   なかったのかの判断は、率の利用がよいでしょう。それが1%増か
   10%増なのかでは対策が違ってきます。
(3)役立つ予算
  経営計画策定の基本は、予算立てから始まると云っています。予算
   は概ね数字の裏付けをつけます。
  売上では、商品別、得意先別等の構成粗利率が分かる販売計画
   です。経費でも、人件費をどうみるかなどの試算が必要です。
 1.役立たないパターン例
   前年比〇%で作っている。
   上昇志向だけの楽観値のみ。
   誰かが勝手に作っている。
   ウラ付けが全くない。
   実績と比較できない予算。
   ただ、何もかもパーフェクトに作る必要はないと思います。まともに
    取組んだら、やたら日時を費やすことになります。
   また、この戦略もこの新商品、新サービスなど不確定要素をつい多
    く入れがちですが、実態とかけ離れた数値となり、未達が続くと誰も
    責任を取ろうとしなくなります。
   できるだけ現場が基本材料を提供しやすい表、フォーマットが必要
    でしょう。そこに効率化などを組み込ませる仕組みも必要です。
 2.予算策定
   経営計画に基づき、まずは年度予算を策定します。通常、損益予算
    (P/L)から立てます。販売の積み上げを集計するが、商品別、得
    意先別などがあって予算と実績が比較できる内容でなくては評価
    のしようがありません。
   そして、例えば比較から導きだせる粗利益率、額を算出しますが、商
    品別、サービス別などにそれがあると差異分析ができ、有効です。
    売上×粗利率ー固定費=利益として管理するのです。
   経営計画の必要利益に対し、粗利の不足分は戦略を踏まえて売上
    をどう追加していくのか、仕入や原価の削減方法をどうするのか、粗
    利率の良い商品開発などを組み入れることを考え、挑戦することに
    なるでしょう。
   固定費の割合も削減の対象になります。(デフレの苦しい時、多くの
    企業が人件費削減を実施しました)
(4)月次予算
  月次予算と実績は、経営計画の実行管理をしていく上で業績をキチン
   とつかむために重要な役割を果たします。そして、毎月の収益状況が
   作成され、チェックできる体制があり、予算と実績の差異をみていく仕
   組み(フォーマット)がなくてはならないのです。
  そのために、月次決算を早く締めることも大切です。適正な月次決算
   は、次のようなことがよく云われています。
  ◆売上と仕入(原価)の金額を正しくつかめているか
   当り前のようですが、計上の基準がしっかりと決まっていて、その通
    りの処理がなされているかです。
     −−商品の仕入れはそのまま費用、原価になるのではなく、それ
        が販売されて始めて「売上」とそれに対応する「原価」に計上
        されます。(実現主義)
   これで粗利益がみえてきて、請求漏れなどのミスがないかどうかが
    分かるのです。また、在庫の正確さにもつながります。
  ◆固定費で注意することが多々あります
   例えば、賞与は支給した月に全部費用として扱うと、その月だけ利益
    が異常に少なくなります。この場合、毎月同じ額(引当)で計上してい
    きます。減価償却費も同様です。
  ◆今月までの実績に次月以降の売上、利益見込みを足してみます
   このまま推移すればどうなるかの決算(年間)利益予測を出していく
    ことが、役立つ月次決算の目標にしてもよいと思います。(2〜3ヵ月
    の経過では年間というより、傾向からいろんなことが分かってくるも
    のです。)
 長々と記しましたが、皆さんに経営計画が達成目標として下りてくる接点
  が予算です。関心は予算と云ってもよいでしょう。だから、予算そのもの
  がキチンと策定されていないと経営計画自体の遂行に支障となるのです。
 予算と実績の比較分析が毎月締めの後に翌月以降の対応に資する
  ことが大事なのです。
  ただ、取上げた「経営計画」本はコンサルタントの観点から理念、基本方
  針、経営戦略、人材育成など多岐に亘っています。しかし、今回はその
  一部である「予算」を注視したため、経営計画の説明不足はまのがれま
  せん。概略とみていただければと思っています。