・ 過去の金融不安を乗り越えて、高度成長期とも云える復活したAS
EAN(東南アジア諸国連合)が改めて注目されています。
(現在、少々停滞気味ですが)
・ 勿論、急に成長したというわけではありません。また、従前より日本
とのつながりは強く、いろんなメディアのニュース等でそのことを知
ることも多々あります。
* ASEAN 1867年タイ、インドネシア、マレーシア、フィリッ
ピン、シンガポールの5ヵ国によって設立された経
済、社会、安全保障等地域協力機構で、歴史ある
国際的枠組
その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、
カンボジアが加盟
・ さて、昨年このコラムで「インドネシアの市場」を取上げ、自動車産
業の実態と今後の伸長について記しました。
・ 先般、インドネシアのみならずASEANの経済成長の中での課題と
日本との関係を特集した日経記事がありました。経済、社会等の感
心が欧米中心なのは日常であり、比較してASEANがどうなってい
るのかの注目は薄いのです。
・ そこで、高成長への懸念が云われている事例をみてみました。
ASEANにおいてエネルギー、食糧不足、人件費上昇、資金な
どの懸念が、成長を妨げると云っています。
・ 過去同じ課題に直面し、克服のノウハウを持つ日本に視線が注が
れています。(いわゆる80年代の「ルックイースト政策」)
(1)省エネ、環境技術支援
・ 小さな工夫といえど、貿易収支の赤字を少しでもなくしていく日本
のノウハウの有効性を吸収する活発な動きがあります。
●カンボジア
・ 世界遺産アンコールワットを例に出しています。年間180万人
の観光客が来るが、タクシーが溢れ、黒煙を出す三輪車があり、
大気汚染を見逃せない状況にあります。
・ これに対し、消費電力7割を輸入に頼っているため、小電力の
地産地消(太陽光、水力リサイクルなど)を根付かせる目標を
持って日本の支援機構と取り組んでいこうとしています。
・ 島しょ部の多いASEANが、エネルギー確保を考えるうえでの
象徴になる可能性を持っています。
●ジャカルタ
・ インドネシアのジャカルタでは、車の慢性的渋滞があります。こ
の緩和に向け右左折レーン新設などを日本のコンサルタントが提
案しています。
・ 行政等が手を付けない小工事で十分可能で効果の高い面が注目
されています。
●シンガポール
・ 通勤ラッシュ解消に対し、日本の鉄道に目を向けています。エネ
ルギー消費量の少ない効率的な都市交通運行の実現に、日本の
組合わせる技術が力を発揮すると云われています。
(2)地方マネー
・ 先進国の国債などに偏重していた日本の信金などの地方マネー
が規制緩和を受けて、ASEANの日系企業に貸し付けが始まってい
ます。
・ 駐在員を置き、資金需要を探っているのです。信金などの貸付残高
の割合を引き上げると相当な融資余力が湧きでます。
・ 国内で縮小した融資資金が東南アジアに向けしかも、投機的でない
長期資金は成長の元手の1つになってくるのです。
(3)食糧への対応
・ 新興国の成長は、食糧の良質化など先進国の食糧事情に近づい
ていくと云われています。中国の大都市圏がまさにそうであり、多く
の食材品が輸入に転じた経緯にあります。
・ 鶏肉であれば大豆カスの調達が欠かせないので、タイは現地企業
が日本の商社などと組んで調達先を広げ、安定的供給に努めてい
ます。
・ 主食のコメについても川上の生産技術から貯蔵庫といった保管方
法、物流の一工夫をすると不足分を相当緩和出来ると云われてい
ます。コメ輸入国となった国への技術、指導の工夫を伝えてきている
のです。
・ 内需拡大が続くASEANが恐れるのは、食糧インフレです。これが
成長を止め、政情不安に結びつくからです。
(4)安心社会へ
・ フィリピンでは日本の保険会社と協議して、効率的な小口保険を生
み出しています。保険そのものへの理解がまだまだといわれている
が、「安心」が今後の成長を占うキーワードになると云っています。
・ 急成長により、消費主導の経済への移行が求められます。それに
は安心して消費出来る社会の仕組みがなければなりません。
・ 将来への不安に貯蓄率はASEAN3〜4割(日本2割)と云われて
います。民間での保険の出番がそこにあり、適正な仕組みを広めて
います。
・ 高齢化も例外に扱えず、介護の問題が浮上してきています。タイは
JICAに協力を求め、日本式介護センターを立ち上げました。シンガ
ポールは中間層に手が届く高齢者用住宅の普及を日本企業が始め
ています。ミャンマーでは日本製の救急車、医療機器を備える計画
があります。
・ 日本はこのような環境、高齢化、人件費等の問題に対する努力を続
けており、安心社会への試行錯誤を繰り返しています。この経験は
ASEANの諸問題に少しでも役立つのかを見つめ直し、その価値が
あれば手助けすることに何ら躊躇することはないと思います。
・ ASEANの成長回復は来年以降との見通しがあるそうですが、今で
も決して低い伸長ではないのです。日本は先進各国との競争が激しく
なる中で、大きな景気浮揚案件だけでなく、良くしていく工夫や仕組
作りの支援は大いに必要なのです。
・ これからも、知恵を出して今まで以上に積極的に進めることによって、
国民から感謝されるような案件を広めていってほしいと願うばかり
です。