ドイツのエネルギーシフト

 近年、日本ではドイツエネルギー政策に関心のある人が少なくないよ
  うです。特に、3.11大震災以降に日本のエネルギー政策に対する論調
  が活発になり、その先進的対策をドイツに求めたのも納得がいきます。
 ドイツにおける政策の転換は、40年に及ぶ継続的なプロセスがもたらし
  た結果なのです。今、ドイツではこの政策の電気代コストが問題になってい
  ることも事実です。
 いずれにしても、ドイツがエネルギー政策先進国であることは、一般的に
  認識されており、これに関する寄稿文があったので、改めて頭の中を整理
  しておきたいと思いました。
 この件は多くの国家的課題を含んでいるが、経緯や事実を淡々と記してお
  り、視点も強い論調ではなかったので入り易かったことを思い出します。
(1)政策の経緯
 ◆環境意識の高まり
   1970年代ドイツは環境に対する意識が高まり、既にゴミの分別が行なわ
    れてきました。ダイオキシンを出さないために高温度での焼却が必要で
    すが、そこでのプラスチック類が不足するとして、分別の議論があったと
    聞いています。
   原発については、チェルノブイリ事故に対する汚染物質が周辺諸国の
    土壌にまで堆積しました。例えば、南ドイツの一部でイノシシやキノコが
    今でも食べられません。
   この事故をキッカケに反原発運動が高まり、2002年原子力からの撤退
    を定めた法律ができました。これにより、新エネルギーへのスムースな
    移行が可能になりました。
 ◆稼働期間
   原発の稼働期間を限定しつつ、段階的なエネルギーシフトを行なうこと
    になり、その許容の新しい法律ができました。
   資金等の問題で直ちに原発停止といった変更はできません。そこで、古い
    8基の原子炉を停止しました。2022年までに全原発を停止する予定です。
   そして、2020年までに再生可能エネルギー発電の割合を35%に、2030
    年には40%に増やす計画です。勿論、エネルギー企業はこうした変更に反
    対でした。そうした中、再生エネルギー法(EEG)が制定され、企業に

    助成を支出して再生エネルギーをつくって利益が上がるようにしたので

    す。
(2)再生可能エネルギー
  ドイツの再生可能エネルギーの中心は、風力発電です。地熱となる温泉は
   少なく、太陽光、水力も多くは期待できません。ただ、風力といっても夏は弱
   く、電力供給は安定しません。蓄電技術の開発支援はコストの高いことが問
   題です。
  しかも、電力供給網が必要であり、地上は住民の反対があるので地下となる
   と、これもコストを高める1つの要因になっています。
  それでも現在、再生エネルギーは電力全体の25%まで増えています。
   
は助成金(優遇制度)に支えられています。当然、国民生活の負担増
   なり、大きな問題になってきています。
(3)ドイツの戦略のポイント
 再生可能エネルギーの推進は環境政策のために必要であり、経済競争力
  の強化を目的とする。
 コストを考える。(原発は再生可能エネルギーを主体とするエネルギー供給
  ができるまでの暫定的技術、10年間は原発を使用せざるを得ない。)
 公平性を考える。
 節電する。(エネルギーは大切な資源であり、今の消費量を減らしていく。)
 環境に関する国際的な取り組みを推進する。
 柔軟に政策を実施する。国連もエネルギーの持続可能性を重視しており、推
  進には柔軟性が最も重要であり、新たな政策、法律を作る時にこのことを忘
  れてはならない。
(4)その他
  ヨーロッパは国々をカバーする送電網が存在しており、不足見通しがある場
   合は例えばドイツはフランスから輸入できます。季節変動に対応できるエネ
   ルギー取引市場
があるのです。
  ドイツの発電事業の自由化は90年代からだんだんと広がってきました。電力
   
は企業所有なので、その使用権限を誰が決めるのかが問題となり、結果
   となりました。
  自治体による発電事業は、特に中小規模の町ではその町の利益にもなって
   いるそうです。(日本でも地熱発電に取り組む町がメディアに出ています。)
  このドイツでさえ、代替エネルギーのコスト増は国民生活、経済活動等への
   影響が大きく、なお未成熟であるのが現状と云っています。