「聞く力」3(完)

〜 前回の続きです 〜
 コミュニケーション「人間関係」の基礎となるものです。
  社会的システムとしてみると人間関係は、人々の相互作用の中で生ま
  れる個々人の役割や行動規範に強く影響します。
 だから、コミュニケーションにおける「聞く力」良好な人間関係を築く
  うえで当然重要視されるのです。
 リーダーの人間的魅力に大きく左右される職場などにあって、部下
  自分を認知してもらっているという動機付けが求められるが、そこでの
  「聞く力」はまさにこれを後押しするのです。
(3)話しやすい聞き方
 1.相づち
   心に傷を抱える人々のカウンセリング専門家は、患者といえる人に
    どのようなアドバイスをするのかを問うたところ、相手の話を聞くだ
    とありました。
   聞いて、“うんうん”“そうか”“つらかったね”“それで”って相づちを打
    ったりするだけと云っています。
   相手の指示で行動するのは、責任を相手に押し付けることにもなりか
    ねません。ただ聞くことがその人の心を開くカギとなり、その人も聞
    いてもらっているうちに“自分はこう考えていたんだ!”を気付くことに
    もなるのです。
   日本人は、相づち好きです。相手の反応をみながら、話をしたいの
    です。リズムがつかめるのです。
 2.オウム返し質問
   “なるほど”“そっかあ”“ほおほお”などは相手の言葉に納得した場合、
    よく使いますが、相手は軽く受け止められているとカン違いすることが
    あります。
   そこで、“オウム返し質問”を活用すると有効です。“家出して、沖縄
    まで行ったのです”“えっ、沖縄まで”とか、すごく怖がりなんです”“恐
    がり?”とかの繰り返しによってキチンと聞いてくれている印象を与え
    ます。
   そして、“具体的には“などの質問を加えると、親近感が増してくること
    があります。
 3.初対面
   愛想よく近づいていけば、誰もが自分に好意的になってくれるというの
    は間違いだと云っています。
   それは自分のペース、リズムを押しつけることだってあるのです。あ
    えて慎重派になることはないのですが、人によって初対面への構え
    が違うのです。人によっての自分なりの愛想の作り方を変えてよい
    と思います。
 4.相手の目をみる
   この言葉は、礼儀としてよく云われています。欧米人はどちらかとい
    えば、睨みつける位の強さだと云います。
   勿論、“眼は口ほどに物を云う”ように、視線から相手の言葉に一生
    懸命耳を傾けていることが分かるでしょう。
   日本文化、慣習ではあまり目を合わせないのが、敬意を表す場面も
    ありました。また、ITの進歩はゲームやメールの利用を日常化し、目
    を合わせての会話嫌いの人が増えているように思います。
   しかし、そうは云っていられない時代であることも確かです。コミュニ
    ケーションでの対話は経験が物を云うと思いますが、視線は相手の目
    だけでなく顔全体や時折下を向くなどをほどよく挟んで、落ち着いた
    目つきへの心掛けがよい結果を生むことになると云っています。
 5.目の高さを合わせる
   相手の視線が高いところにあると、どうしても偉そうに、生意気さがあ
    るように受止めてしまいます。話を伺っている側なら、やはり目線は
    同じか下の方が親近感が生まれます。(昔のアナウンサーで、背の
    高い人はいなかったように思います。)
   緊張せず、安心して話をしてもらうには、謙虚な気持ちを表す少し下
    から尋ねる姿勢が大事なのです。ただ、そこで“わかります、わかり
    ます”と低い位置を強調するような応答は、使い分けが難しいと云わ
    れてます。
   すなわち、そんなに相手を理解できるものではありませんし、共感す
    るような態度は自分の経験を踏まえての発言でないと、反発される時
    もあると思うからです。
    目線が低いと気持が重なり、そうなりがちなのです。
 他にも多くのヒントの記述がありますが、この辺で終わりたいと思います。
 ある識者によると、「聞く」ことは自分自身を「知る」ことでもあると云って
  います。
  頑張って聞いていても、全てが分かることにはなりません。分かる部分の
  代表が、自分もそうした経験がある時に共感を通して相手の感じ方が分
  かるのです。
 それは改めて自分自身を知ることです。そして、「知ってるつもり」「分
  かっているはず」から一歩進めて人の話を理解する助けになるのです。
  会社の中でも、自分の会社の強み弱みを知らなくて、競業他社とどのよ
  うにして戦うのでしょう。
 部下からどうしましょうと相談されたり、判断を求められたりした場合、「
  は答えを与えるのではなく、質問をさせろ!」といったことを強調して
  いる著書がありました。
 自分の考えを押し付けるのではなく、質問によって気付きにつながるとい
  うものです。その方が型にハマらず、話が次々と進展していき、ひとりよ
  がりにならないのかもしれません。
 自分の立ち位置が明確になってきて、論理的視点も出てくる場合もある
  のです。
 なんといっても、「聞くこと」は案外エネルギーのいることなのです。
  1人ひとり、考え方などが違うのです。1つの理屈が全てに当てはまらな
  いので、関心をもって“聞く”姿勢が大切なのです。そして、分かったつ
  もりになることを避ける一連の流れには、エネルギーが必要です。
 気の抜いた質問やいっぱひとからげの聞き方は、敏感に悟られてしまう
  ものです。あの人と会話して“ああ、なにか役にたったな”“楽しかっ
  たな”と思われる聞き手がベストなのでしょう。