日本とインドとのEPAに関連して

・ 9月、日本とインドとのEPAが大筋合意をみました。
  これは2国間の貿易、サービスなどの自由化を進める「経済連携協定」です。
  10年位かけて、大半が関税撤廃となります。
・ 2008/9月スイスやベトナムとの決着以来とのことです。その主な要因は次に
  あると云われています。
  ①韓国が積極的にEPAに取組み、インドとEPAの決着をみました。これに

   遅れては、成長著しい市場に取り残されることになりかねません。
  ②今まで豪、ニュージーランド等との交渉において、農業分野の課題調整が
   難しく、進展していません。しかし、インドがそこを強く要求しませんで

   した。(既決のメキシコとは豚肉が議論になった。)
・ マスコミの扱い以上の大きな成果だと思っています。
・ 日本が内需拡大の見通しが暗い中で、製造分野の貿易立国を戦略とするなら、
  各国と着実な合意に向けての努力と決断が求められているのです。
・ ところで、世界の自由貿易についての本家本元は、WTO(世界貿易期間)

  です。
  モノ、サービス、知的財産などの貿易が、ルールに基づいて円滑に行われる
  ためのそして、加盟国(約150ヵ国)の貿易紛争を解決していく国際機関です。
・ さらに、自由で公正な貿易を促進するための多国間貿易交渉(通常「ラウンド」
  と呼ばれ、現在ドーハ・ラウンド)を行っています。
・ WTOでは対象国も多く、欧米と発展途上国との主張に開きがあります。そこ

  で、WTO規律の中で了とされているFTA(地域自由貿易協定)やEPAが

  2国間あるいは北米、アセアンなどで成立しています。
  (EPAはFTAの要素に取引制度、方法、人の行き来など幅の広い取り決め)
・ ラウンドに対応して、日本の食糧安全保障等から農業政策の大きな課題2点を
  拾い上げてみると、
  ①コメの関税引き下げ
   ・各国が農業保護政策を設けることは当然のことですが、コメは関税約700%
    だそうです。極めて高い関税で守っており、自由化との整合性で日本の
    弱みでもあります。(主要国は100%程度。そのために、ミニマムアクセス
    といって、一定量の外米輸入を義務つけられています。それが、過日の
    加工米を食糧米として横流しの問題となったのです。)
   ・ラウンドでは内外格差のある食糧について、上限関税(どんなものでも例え

    ば上限200%)を設けようとする議論が続いています。
   ・日本は食糧自給率を1つの対抗策としているが、自給率うんぬんは日本
    (及び韓国?)だけの指標であって、主要国にはないそうです。(他国との
    比較も日本が独自に算出したものです。)
  ②農業政策(補助金)の転換
   ・一方、農業支援は従来、個々の食糧品目に直接的な価格支持補助金で対応
    してきたやり方です。
    しかし、WTOの規則にある商品市場メカニズム(自由化)を重視した、

    透明性のある政策が求められています。
    欧米主要国の農業政策もすでに、これに転換しています。
   ・そこで、現在民主党が実施しようとしているのが、農家戸別所得補償です。
    価格形成は市場に任せ、一定額(差額にも)を農家に直接支払うことで、

    達成しようとするものです。(所得維持機能)
   ・ただ、下落し続ける販売価格の実態に補助金で対応するには結局、以前の
    食管制度と同様、予算面で行き詰ることになりかねません。
・ いずれにしても、本当はいろいろな要素が絡み合って大変ややこしい話しです。
  専門家でないと、とても全貌を理解することはできませんが、製品の輸出と農業
  保護という国の基本戦略にかかわる大きな問題なのです。
・ 従って、WTOに関連することは、もっともっとそのメリット、デメリットを

  知る必要があり、メディアが積極的に取上げて啓発することを期待します。