・ 宋文洲氏のコラムは、なかなか我々が気付かない点、あるいは向こう
側からの真直ぐな指摘等相変わらずで、楽しく読んでいます。
・ ビジネスに絡むものが大半ですが、有識者ぶった解説ではなく、当り前
のことを当り前に語っている魅力があります。最近のテーマ2つを取上
げてみました。
(1)経営における“心” −−創業20年を振り返って
・ まず、自分は経営に向かないと云っています。
試行錯誤の中で、悩み苦しんだためかもしれませんが、結果的に20
年も経営者をやってきたのですよ。謙虚すぎます。
・ そこには、成果を上げるために人々を管理することがとても難しいた
めそう云っているのです。向かない裏返しが、そこにあるのかもしれま
せん。
・ そして、社員と顧客がいるから、そんなに無責任に、簡単に辞めるこ
とが出来なかった。その思いがベースにあったので、頑張ってこられ
たと強調されていました。
・ 今の会社を支えている幹部達をみると、よくこんな弱小会社に入社し、
長い間頑張ってくれたものだと感謝の気持で一杯です。いろいろ辛
い目に遭ってきたが、振り返るとやっぱり支え続けてくれたのは、彼ら
だったのですと云っています。
・ 部下を一個人としてみると、働いている一人ひとりの幸せを願わざる
を得ない結論になると。
・ “宋さんがいたから、私達が居る”と云ってくれる人がいるが、全く違う。
“あなたがたがいるから、私がここに居る”のです。会社を通して
皆が幸せな人生を過ごしていくことが自分の願いであるとも云ってい
ます。
・ まさに、トップでないとなかなか云えないことですね。そのうえで、何を
すべきかの経営能力がいるのです。
・ “幸せを願う”は、その個々人の能力に応じた信頼関係がなければな
らないと思いました。理屈というより、思いが前に出るのです。
・ 昔、私が零細企業のおやじ連中と話をしていて、毎月毎月考え悩むの
は社員にちゃんと給料が払えるかだと云っていました。社員が頑張っ
てくれなければ、成果はゼロなんですは、会社に対する思いを代表す
るような言葉でした。
・ 選択と集中をせざるを得ない厳しい経営環境にあって、“企業は人だ”
と叫んでいながら、リストラに手を付けない会社は見当たらないくらい
です。
・ そんな状況であっても、上記のような“幸せ”の思いを持った“トップの
人間性”がなくてはならないと思います。辞めていった人が、再び宋氏
の会社に戻ってくる事実からもそれが伺えます。
(2)リスク対応
・ JR山手線内で宋氏が経験した出来事から、リスク管理を考えさせら
れるコラムがありました。
・ 車内床に中年男性が急に倒れて動きません。事態の重大さが乗客
に伝わり、社内の緊急停止ボタンを押して説明したところ、次の駅で
停車するとのこと。
・ 到着後職員が見当たらず、即ホームの緊急ボタンを押して駅員を呼
びました。その駅員の対応に疑問を感じたといっています。
◆手ぶらであった。(車いすか担架は必要の有無にかかわらず、用
意してもよいのでは)
◆救急車を呼んでいなかった。(車掌から状況報告が入っているなら
直ちに連絡すべきこと)
・ 駅員は現場の事実を見て分ったのかもしれませんが、情報はどう伝
わったのでしょう。結局、乗客が119番を呼び、説明したのです。
・ その後、JRも担架やAEDが用意されましたが、心臓マッサージを続
けていたのは乗客でした。
・ 私も車内で気を失って倒れたことがありますが、上記のようなことは
なく見事な緊急システム対応で、すぐ車イスに乗せ運んでくれまし
た。他の経験者の話を聞いても、あまり変わりませんでした。
・ だから、今回のことは上手く回らなかった例ではありますが、決して
ないことはないと思います。
・ 当然、乗客はアタフタしていて何をしてよいのかが分かるはずもなく、
連絡や説明が適切に伝わらなかったのかもしれません。また、パニ
ックになると、一刻を争う時は言動が遅く感じると云います。
・ そうはいっても、JRは緊急事態が常時起きており、諸情報からある
程度の重要度は想定できるでしょうし、そこでの緊急システムが組
織として働き、行動するのが通常と思います。
・ 乗客皆んなで助け合うといっても、実際の場面では無責任集団の可
能性が大なのです。駅員が乗客に“あなたは〇〇してください”など
の指示を出してもよいと思います。時間との勝負の時は、スピード
が命なのです。
・ いずれにしても、乗客の説明にも限界があるので、情報の提供があ
った場合は何とか全体像を推測する人がいて、その人を中心に優
先順位をもって信念ある行動がリスク管理に最も大切であると云
っています。
・ 対応のバラバラは避けなければなりません。駅は乗客との大事な接
点であり、乗客は駅(員)がしっかりと対応してくれるものと信頼して
いるからこそなのです。
・ 今回の件は、目の前に起きた事態に懸命に行動する面に視点がいっ
ていますが、リスク管理に対する問題提起として社内の訓練、教育を
もう一度見直す必要性を強く感じました。