金融商品被害

 我々はメディア等を通して多くの詐欺被害を目にしており、併せてそ
  の手口と引っかからないための解説があって、それなりに分かってい
  るつもりでいます。
 行政も規制をかけたり、相談窓口への連絡を呼び掛けをしても、そ
  の被害は一向に落ち着きをみせないのです。
 ここまでくると、ダマされる方にも問題があるとは云い切れないほどの
  被害額を知って、あ然とするくらいです。
 金融商品“消費者は何故だまされるのか”の雑誌記事がありま
  した。オレオレ詐欺はよく知っているが、金融商品はそれほどが正直
  なところでしょう。
 そこで、今更ではあるが少し整理をしておいた方がよさそうという気持
  になり、まとめてみました。何を隠そう、自分がこの手の勧誘を多く受
  け、もう少しでがあったからなのです。
(1)背 景
  さて、消費者被害は経済、政策、ライフスタイル、価値観などの変
   化によって、常に新たな手口が生じている特徴があります。
  オレオレ詐欺でも、単にATMからの振り込みから直接訪問など手
   口を変え、しかも複雑化しています。
  2000年代に爆発的に増加した消費者被害は、「振込め詐欺」、「イ
   ンターネット取引や出会い系サイト等を通じての悪質商法」そして、
   高齢者を中心とした「金融商品被害」です。
  金融商品被害に注目してみると、次の2つに大きく区分されます。
   1.金融機関等から勧められて安全と思って期待したが、元本が大
    きく目減りした。
   2.「なんちゃって金融と云うべき詐欺的金融商品に関する被害
  いずれも、高齢者の退職金や老後の備えを狙ってのものです。
  1のほとんどは、キチンとした説明を受け、そのうえで自分の判断
   から購入しており法的にもなんら問題はありません。どちらかと云
   えば、欲の皮を含めて少しでも良い運用との結果です。
  しかし、2は単なる経済的損失に止まらない深刻さがあると云わ
   れています。
  すなわち、金額が大きく、老後生活の破壊につながりかねません。
   それが、自らのプライドと人生における自信などの破壊というメン
   タル部分のダメージとなり、ひいては家族関係の破壊も起こり得
   るということです。
  そう考えると、修復が困難な課題を伴っており、それがまさに大き
   な社会問題として取上げられる背景なのです。
(2)最近の金融商品詐欺の種類、手口
 ▼未公開株詐欺
   2000年に入ってから多発するようになりました。規制緩和からく
    る政策や企業の直接金融による資金調達の流れの中で、とりわ
    け新興企業による未公開株上場が推進された事情が背景に
    あります。
   登録のない仲介業者等からの電話勧誘、“上場前の株式紹介
    により、売却益が確実”というものです。
   しかし、実態は上場予定がない、株式そのものが不明、詐欺用の
    会社設立などであって、無価値な未公開株の購入となります。
   典型的な手口は、まず勧誘の電話、パンフレット送付があります。
    次に、別会社から“高く買い取りたい”と持ちかけの電話があり、
    “あなたは選ばれた顧客なので是非買い取りたい”です。
 ▼社債、ファンド、外国通貨など
   世間の未公開株への注意喚起が進むと、新手の商品を工夫する
    ようになります。
    ・海外の不動産投資
    ・外国通貨
    ・有料老人ホームの権利
    ・学校債
    ・医療機関債権
    ・風力等自然エネルギー事業への投資
    ・CO2排出権取引
    など、次々と新たな材料が目まぐるしく出てきており、変化も激しく
    なっています。
   適正な権利の販売は特定商取引法規制の及ぶところではないが、
    仲介サービスで差金決済取引をしたとして処分されるケースがあ
    ります。他に、実態のない事業として摘発さたケースがあります。
   いずれにしても、法規制ギリギリのところでの商売や、投資資金
    を集めてドロンするなど素人見には契約書面の不備等上手なセ
    ールストークから判断つきづらい面が多くあるのです。
   単純なオレオレ詐欺で迫真の演技をされると、詐欺だと分かってい
    ても実際はオタオタして動揺すると云います。ましてや、複雑な勧
    誘は本当らしさが散りばめられており、直ぐに見破ることは難しい
    と思います。
(3)環境の変化と法律
 ▼高齢者にとって
   規制緩和は銀行、証券会社、保険会社の住み分けがなくなり、
    様な金融商品の出現と預金への魅力がなくなってしまいました。
   これまで、定期預金等は預けてだけでけっこうな利息が付いて、
    それが生活の余裕を生んでいました。しかし、今や安全で確かな
    投資は難しく、そのうえ「投資は自己責任」の意が強くなりました。
   一方、年金への心配、医療への不安、介護保険の後退など老後
    生活の不安高齢者に一挙に圧し掛かっています。
   高齢者にとって180度の環境変化と云えます。そうなると、高齢
    者は少しでも安全に蓄えを運用したいと考えます。
   そこでは、今までの人生経験をもっての選択が難しくなってきて
    おり、被害が高学歴の男性も少なくないと云われています。
 ▼法 律
   特定商取引法‥‥訪問販売、電話勧誘販売規制の法律が元で
    あり、契約書面交付義務やクーリングオフ制度を設けています。
   しかし、「権利」販売は指定した施設利用権やサービス利用権だけ
    であり、未公開株債権適用対象外であるため、老人ホーム
    利用権、永代供養権などの対象外をネタとして使われてしまいま
    した。
   従って、被害が拡がり続けて破綻し、初めて詐欺が判明すること
    になったのです。
   例えば、医療法人に対し施設、設備導入資金を直接集める方法
    が認められており、それを証券化して販売できるが、規制する法
    律がない実状にあります。
 ▼被害防止
   記事では、平凡であるが「自分の知識にない取引」をする場合、
    相手の説明をまず疑う事から始めてもよい位と云っています。
   自分の判断だけで選択しない、即断即決は避けることです。金融
    商品は情報収集と相談が重要です。相手が情報を持っていない
    時は、危険が倍以上になると云われています。
   要は、分からないものには手を出さない、契約しないことです。
    (ちゃんと断れますか)
   一時、デイトレーダー、FXのカリスマのような人がメディアで紹
    介されていましたが、ほんの一握りの人でほんの一時期だけなの
    です。
   不動産に“特売”はないの格言があるように、金融商品もそんな
    に上手い話があるわけがないがスタートです。