・ 厚労省が、厚生年金基金の解散と制度廃止を打ち出しました。原因
は明らかに財政悪化が進み、約半数の「基金」が赤字でそれを補い
切れないでいる実情があるためです。
・ 厚生年金基金はサラリーマンなどが加入している厚生年金の一部を
国から借りて(代行)、それに企業独自の資産を加えて運用、給付し
ている年金です。
・ 企業の従業員にとってプラスアルファーの年金が受け取れるので、
有効な老後対策として広まった制度です。同じ事業の中小企業も集
まって、基金を設立しました。
・ しかし、バブル崩壊後デフレが続いてマイナス運用となり、とうとう大
手は赤字を補てんした上で次々とこの代行部分を返上しています。
(その後は、基金連合会が受け手になり、運用、給付しています。)
・ 赤字補てんが難しくなっている中小連携の基金は、今年初めのAIJ事
件で運用部分の巨額損失が明るみになるなど、問題が一般にも知ら
れるようになりました。
・ 肝心の「厚生年金」も高齢化と少子化がダブルで進行しており、加え
て運用の厳しさから支給年齢を遅らすこと、支給額減少や現役世代の
掛け金増などの取組みに国が乗り出しています。
・ ただ、厚生年金は税金の投入などにより、破綻のような極端なことは
ないのですが、既得権(水準、給付年齢など)維持に反対とばかり云っ
ておられない時代になってきました。
・ 国の年金も加入年数記録不備等事務処理の誤りが近年問題になり、
それがあまりにも膨大な数であったため、メディアで大きく取り上げら
れました。
・ その後、国の年金業務運営の健全化を目指して、社会保険庁を廃して
日本年金機構が発足しました。また、誤りがあれば早急に是正できる
よう「ねんきん定期便」により、現状の加入者自身の現状が分かるよう
にもなりました。
・ いずれにしても、老後の生活を想定するに当って必ず考えなければな
らないのが、国の年金との付き合い方です。
・ 退職近くにならないと、年金そのものを真剣に考え、検討していく心情
にならないのが普通だと思います。具体的に年金に対するイメージが
湧かないからでしょうか。
・ “国の年金は不安”、“年金が崩壊するのでは”と思っている人ほど
少しづつ年金を理解していくことが必要です。高度成長期のように全て
国、会社等にお任せではなく、自分から知り、行動していく時代になっ
たのです。
・ そこで、不安、不信を少しでも解消できそうな表題のコラムがありまし
たので、取上げてみました。
我々の関心事は、大きく分けて次の2つだと思います。
①2030年過ぎる頃積み立てが枯渇して、現在の国の年金は破綻
してしまい、掛け金が損になるのでは。
②若い世代は掛け金が重くなるばかりで今の受給者(とりわけ団塊世
代)との世代間不公平が喧伝されており、不信感のカタマリのよ
うになっています。
・ ちょっと主題から逸れますが、年金の種類からみてみます。
(1)年金形式
1.確定給付年金
・ 国の年金に代表される型です。老後の現時点での“受給額が制
度としてあり(確定している)”、その逆算となる掛け金を現役時
代に支払っていくものです。
・ 国の年金の場合、自分達の掛け金、国の補助及び積立金運用が
原資になります。少子化等により見込みが少なくなると将来の積
立金総額に不足分が生じ、現役世代の掛け金増、受給者の支給
減、支給開始年齢検討などで対応しなくてはなりません。
・ 従って、若い世代は掛け金増になり、支給時代には減額されそう
などからくる反発、不信感が強いのです。年金受給者は生活権
がかかっているので、逆に現状支給維持を求めるのです。
2.確定拠出年金
・ 2001年法施行により始まりました。厚生年金基金を返上した
会社は、従業員に対し基金の代わりに取り入れていることが多
いと云われています。退職金の一部をこの中に組み入れて運用
している場合もあると聞いています。
・ 私的年金の1つで、“現役時代に掛け金を決めて(拠出)”、そ
の資金を運用することにより、それを受給額として支給される年金
です。(日本版401kと云われている)
・ 会社も若干補助するが、運用は本人に代わって生保、信託会社
が行ないます。当然、損益は発生しますが、自分の貯金(個々
人の資産)そのものが直接年金額に反映されます。
「個人型年金」とも云われています。
・ 会社も基金のように内部で積み立てる必要がなく、資産積立不
足からくる破綻がなくなります。
・ まだ本題に入る前にゴタゴタ云い過ぎて、ちょっと長くなりすぎました。
申し訳ありませんが、「破たん」と「有意な受給」については次回とし
ます。